ひざの痛みと治療方法 -高位脛骨骨切り術とは-

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お医者さんのインタビュー

早期変形性膝関節症に対する膝周囲骨切り術の良いタイミングとそのメリット

秋山 武徳 先生

職歴

平成8年4月
九州大学整形外科学教室入局
平成8年4月 ~平成9年5月
九州医療センターリウマチセンター
平成9年5月 ~平成9年12月
麻生飯塚病院 整形外科
平成9年12月~平成10年6月
九州大学病院 整形外科
平成10年6月~平成11年5月
福岡逓信病院 整形外科
平成11年6月~平成12年3月
新日鉄八幡記念病院 整形外科
平成12年4月~平成19年3月
浜の町病院 整形外科
平成19年4月~平成25年6月
浜の町病院 整形外科医長
平成25年7月~平成25年10月
国立病院機構 福岡東医療センター
平成25年12月3日~
秋山クリニック開院

所属学会

日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 スポーツ認定医
日本整形外科学会 運動器リハビリテーション認定医
日本リウマチ学会 専門医
日本Knee osteotomy フォーラム代表世話人
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 関節鏡技術認定医
日本Knee Osteotomy and Joint Preservation 研究会
ISAKOS active member
九州膝関節学会
九州knee osteotomy 研究会世話人
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS) 評議員

今回、2013年12月に福岡県糟屋郡新宮町に開業され、自身のクリニックで診療手術をする他、福岡みらい病院でも手術をされていらっしゃいます秋山クリニック 院長 秋山 武徳先生に「最先端の膝周囲骨切り術のご紹介」「早期変形性膝関節症に対する膝周囲骨切り術の良いタイミングとそのメリット」についてお話をお伺いしました。

1. ~変形性膝関節症とアライメント異常~

変形性膝関節症の患者さんでは、O脚やX脚などの下肢のバランス異常があることが多く、治療では下肢のバランスを診ていくことが重要です。
このバランス異常を『アライメント異常』といい、これが変形性膝関節症に悪影響を与えていることがわかっています。このアライメント異常の矯正は、膝関節症の予防と治療に大きく貢献すると考えられ、様々な治療法が確立されています。

膝関節アライメント異常の例

膝関節アライメント異常の例

2. ~変形性膝関節症の治療~

変形性膝関節症の治療は、まず保存治療を行います。
日常生活においては、正座やしゃがみ込みといった動作を避け、膝への負担を軽減するために体重管理にも取り組んでいただきます。

さらに、運動療法・内服・注射などを並行して行っていき、炎症悪化などが起こらないよう、適切なアドバイスのもとで取り組んでいただきます。
その他、NSAIDS(非ステロイド性の消炎鎮痛薬)の内服やヒアルロン酸注射、ステロイド注射、場合によってはインソールなどの装具療法も取り入れます。

以上のような保存療法を3ヵ月ほど続けても改善されないという場合に、手術療法を考えていきます。

治療の流れ

3. ~手術の種類と手法~

手術は、大きく分けて『膝周囲骨切り術』と『人工関節置換術』の二つがあり、若い人・活動的な人・関節の破壊が軽いという人は『膝周囲骨切り術』、高齢で関節破壊が強い人には『人工関節置換術』が検討されます。
今回は、この『膝周囲骨切り術』について詳しくお伝えしていきます。

手術の種類と手法

4. ~膝周囲骨切り術とは~

膝周囲骨切り術(Around the Knee Osteotomy:以下「AKO」と表記します)は、文字どおり膝周囲(大腿骨:ふとももの骨・脛骨:すねの骨)の骨を切って足をまっすぐにするという手術です。

例えば、O脚の人は、その足の形からどうしても膝の内側に体重が集中してしまいます。そのため、膝の内側の軟骨が傷みやすく、変形性膝関節症の原因になりやすいという傾向があります。
このような患者さんの多くは、荷重が集中しない外側の軟骨は綺麗なまま残っています。そのため、アライメントを整え、荷重の軸を少し外側に移動し、外側の綺麗な関節で体重を支える状態にするのです。

膝周辺の変形のある脛骨や大腿骨を骨切りし、変形を矯正したうえで、ねじで固定するという流れになります。この方法によって、アライメント不良を改善し、荷重ストレスを再分配し、痛みの軽減や変形の進行を遅らせるという効果をもたらします。

膝周囲骨切り術とは

5. ~近年のAKOの考え方~

AKOにおいては、昔から『高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy:以下「HTO」と表記します)』と呼ばれる術式が一般的でした。これは主に、O脚の変形性膝関節症において脛骨だけで矯正して足のバランスを整えるというものでした。

しかし、膝の周辺を構成している骨は、脛骨に加え大腿骨もあります。変形性膝関節症と一口に言っても脛骨に変形がある人もいれば、大腿骨に変形がある人、両方が変形している人と様々なのです。

そこで、二つの骨のバランスをしっかり確認し、どこに変形があるのかを見極めて矯正をした方がいいのではないかという考え方が浸透してきました。
このようなことから、最近は脛骨に限らず、その人の変形の状態に合わせたAKOが主流になっています。

6. さらに進化した術式~秋山医師オリジナル世界初の骨切り術~

さらに進化した術式

秋山医師は、独自の術式である『 Open wedge distal tuberosity tibial osteotomy:以下「OWDTO」と表記します)』を開発し、その術式が注目を浴びています。英語の論文も発表され、国内ではすでに多くの医師がこの『OWDTO』を採用しているとのことですので、その新しい術式についてお聞きしました。

一般的なHTOの多くが『オープンウェッジ高位脛骨骨切り術open wedge high tibial osteotomy:OWHTO)』という術式で行われています。
この方法は、手術中の手技の流れで、「膝蓋骨(膝のお皿)を引きさげる」という力が加わるもので、これによって、術後に膝蓋骨の軟骨に問題が生じ、場合によっては膝蓋大腿関節の変形性関節症が進行してしまうというリスクがありました。
骨を切って開く際、その延長線上に膝蓋骨から出ている腱の付着部があるため、それを切らないように避ける必要があります。そのために骨切りをするときに「切り上げる」という方法になります。
結果、矯正によって膝蓋骨の腱を下に引っ張る形となり、膝蓋骨が少し低位にずれてしまうということが起こるのです。

従来のHTO術式

そこで、切り方を変える、つまり従来は切り上げていたものを「切り下げる」ことで、膝蓋骨の位置を変えない手術が可能になりました。これは「粗面下骨切り術」という方法です。

しかし一方で、切り下げることで今度はその部分に出っ張りや骨の欠損が生じ、骨が不安定になるという別の問題も出てきました。
そこでさらに、「円弧に切る」という新たな切り方を取り入れたのが、私の生み出した術式『OWDTO』です。
この術式で、膝蓋骨低位の予防に加え、安定性も実現できるようになりました。現在、このOWDTOを200症例以上に行いましたが、従来の方法と比べて、膝蓋大腿関節の変形性関節症の進行が予防できることがわかりました。臨床成績も良好であり、今後期待ができる手術法と確信しています。

OWDTO方式

7. 早期変形性膝関節症に対するAKOの良いタイミングとそのメリット

関節症の程度の軽い早期変形性膝関節症でも、急速に軟骨が傷み、変形性膝関節症が進行し、手術のタイミングを逸する患者さんがいます。
患者さんの中で、急速に進行することがわかっているのであれば、程度の軽いうちに手術をした方が症状が改善するだけでなく、関節症の進行を予防できる効果が期待できるからです。

そこで、当クリニックの早期変形性膝関節症の患者さんのデータを使い、急速に関節症が進む患者さんの特徴を調査し、手術のタイミングについて検討してみました。結果、関節症が進む患者さんの特徴は、保存治療後にも痛みが続き、10ml以上の水腫を繰り返す患者さんであり、さらにMRI検査にて半月板断裂後に半月板が亜脱臼している、また骨の内部の骨髄部分に炎症が起きている患者さんに多いということがわかりました。当然、アライメント異常が大きく、若くて活動的な人ほど進行しやすいという傾向があります。

早期OA患者に対する
膝周囲骨切り術のタイミング

早期OA患者に対する膝周囲骨切り術のタイミング

ちなみに、近年は膝の痛みを改善するというサプリメントなどを服用している方も多いですが、症状が少し治まることがあっても(痛くなくなったという報告も確かにありますが)、軟骨が正常に戻るというものではありません。サプリメントや健康食品で根本的に治すのは難しいのです。

少しでも自覚症状があったら早期に医療機関に行き、専門的な治療を開始することが望ましいと言えます。先述のとおり、まずは保存治療を試みますが、それによって半分以上の人に痛みの軽減や水が溜まらなくなると言った症状の改善が見られます。
しかし、保存治療後も痛みと10ml以上の水腫が続き、実際3ヵ月後のレントゲンで関節の隙間がより狭くなっている人は、保存治療だけでは進行が止められないと判断できるため、手術をお勧めするという流れになります。特に、アライメント異常が大きく、上述のようなMRIの異常がある若い活動的な患者さんには良い適応と思われます。

30歳女性術後のアライメントと回復状況

30歳女性術後のアライメントと回復状況

8. 患者さんへのメッセージ

AKOは「(人工のものではなく)自分の膝を残したい」「まだまだ旅行やスポーツを楽しみたい」という人に適した手術療法です。
特に、30代~60代で、常日頃からアクティブという人には積極的に考えていただきたい治療法と言えます。
当クリニックでAKOを受けた多くの患者さんが、ゴルフ・テニス・ソフトボール・スキー・山登り・ダンス、身体を積極的に動かす労働などもできるようになっており、たくさんの喜びの声が寄せられています。

66歳男性術後1年後のレントゲン画像及び回復後の様子

66歳男性術後1年後のレントゲン画像及び回復後の様子

現代の医療は日々進歩しており、変形性膝関節炎の治療も選択肢が増えています。
手術というと恐れや不安もつきまとうものですが、骨切り術の技術は格段に向上し、多くの患者さんを痛みから解放された暮らしへと導いています。
もし、膝の痛みや違和感を覚えたら、少しでも早い段階で医師に相談し、早期に適切な治療を始めることを重ねてお勧め致します。まずはお気軽にご相談ください。