治療方法について
変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを組み合わせて行われます。手術療法は、保存療法で効果が得られない場合に選択されます。
- 保存療法
- 手術療法
手術療法の種類
手術療法は放置すると将来重度の変形性膝関節症となるような症状や、
障害が高度な方に行う療法です。
関節鏡視下手術
関節鏡で観察しながら、変性した半月板や軟骨、増生した滑膜や骨棘の処理を行います。創(キズ)も小さく、手術後数日で歩行が可能で、早期に社会復帰ができます。ただし、効果の持続性が短い場合もあり、病期が進行した例は適応にならないことが多いです。
高位脛骨骨切り術
(HTO手術)変形のために内側(内側大腿―脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切ることによりO脚を矯正し、比較的きれいな軟骨の存在する外側(外側大腿―脛骨関節)に移動させる手術です。脚の形はO脚からX脚に変わります。患者さんの膝が温存または再生できますので、正座が引き続き可能であったり、スポーツや農業などの仕事へ復帰された患者さんが多くいます。一方で、骨癒合(切った骨がくっつくこと)するまで痛みが多少続くこともありますが、全く心配はいりません。また、機能回復にはリハビリをしっかり行うことが必要です。
高位脛骨骨切り術
(HTO手術)の対象者とは変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなど、年齢を問わず活動性が高い患者さんは検討することをおすすめします。現在使用されている人工膝関節の耐用年数は15~20年程度と想定されております。こうしたことに加えて、「人工膝関節置換術」の再手術は、初回の手術療法よりも難しくなることがありますので、可能な限り再手術をしなくても済むように、65歳よりも若い患者さんには、この「高位脛骨骨切り術」が勧められております。
手術のメリットとデメリット
メリット
侵襲が少ない手術です。関節が温存または再生されます。手術後の日常生活に対する制限が比較的少なく、スポーツも可能、正座が可能になる例が多いです。また、手術の進歩により手術翌日から立つこともでき、1~2週で歩行可能で入院も3週間程度です。
デメリット
骨が癒合するまで多少痛みが続きます。機能回復まではリハビリをしっかり行う必要があることです。
人工関節置換術
(TKA手術)変形した関節の表面を金属などでできた人工の部品で置き換える手術です。変形性膝関節症の末期となり、膝全体が大きく変形し、痛みが強く立ち座りや歩行など日常生活に支障をきたす場合に行われます。TKAの利点は、以下のとおりです。
近年の人工関節はデザインの改善や安定した素材の提供が行われており、15年前後の安定した成績も報告されております。一方で、欠点としては、膝の曲がりは90°(直角)~120°前後までとなりやすいことがあります。人工関節の寿命を持たすために労働やスポーツなどに制限が付くことなどもあげられます。
手術のメリットとデメリット
メリット
- 入院期間が短い
- 手術翌日から立って歩くことができる
- 新しい膝に慣れるとほとんど痛みが気にならない
デメリット
- 自分の膝はなくなります
- 細菌感染にきわめて弱い
- 人工関節がすり減ったり、緩んだりすると入れ換えが必要
重症度における
治療ごとの術前及び術後
患者さんQOL回復予想図
縦軸は患者さんのQOL(生活機能)の状態を表し、上にいくほど活動性が高いことを示します。横軸は患者さんの症状の重症度を表し、右にいくほど重症ということを示します。丸は治療の手段を表し、おおまかに患者さんのQOLと重症度によって選択される位置を示しています。また、術前と術後でQOLの変化(その治療を受けることでどのくらい機能が回復するか)を予想しております。
監修:竹内 良平 先生(さいわい鶴見病院 関節外科センター センター長)
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