2024年8月14日

膝の痛みを和らげ、自分らしく生きる HTO手術とは

68歳 男性

※以下は個人の感想であり、手術の効果を保証するものではありません。回復の進み具合、回復の程度には個人差があります。

 年齢を重ねてもスポーツや仕事に打ち込むアクティブシニアが増える中で、膝の痛みに悩む人は一定数います。この治療方法として、近年、高位脛骨骨切り術(HTO手術)が広がっています。膝の骨に切れ目を入れ、角度を整えてまっすぐにすることで、支障なく日常生活を送れるようになり、スポーツや体を使う仕事に復帰した患者さんも多くいます。日本でHTO手術が広がる背景には、手術で使う医療器具の進化もあります。

歩くだけでも膝が痛み、ウエイトリフティングはあきらめていた

西尾和浩さん(68歳)は、大学時代にウエイトリフティングに打ち込んでいました。社会人として働き始めてからは仕事が忙しく、ウエイトリフティングからは離れていましたが、退職後はトレーニングを再開したいと考えていました。

 

しかし、年齢を重ねるにつれ、昔からのO脚が悪化。歩くたびに膝の痛みが強くなっていきました。スクワットなど膝を曲げた姿勢をとることが年々難しくなり、スポーツどころではありませんでした。

 

痛みを何とかしたいと、近所の整形外科を受診したのは61歳の時です。医師からは「人工関節を入れる手術をしても耐用年数があるため、再手術が必要になります。今はお勧めできません」と説明を受け、痛みを我慢する日常生活に不安を感じていたといいます。

 

その後も痛みを軽減するためにトレーニングやストレッチをしたり、ヒアルロン酸注入や痛み止めの処方、膝の痛みに関連する本を読み、多くの治療法を試したりと改善策を探りましたが、これといった効果がないまま時間がたちました。

 

そんなある日、知人からHTO手術の話を聞き、専門病院を受診します。病院の医師は、レントゲンを見せながら西尾さんの脚の状態と手術について説明してくれました。自分の膝を温存しながら痛みを和らげることができると聞いた西尾さんは、その日のうちに手術を受けることを決めたと言います。65歳の時でした。手術によってウエイトリフティングに復帰できる可能性があることも決断を後押ししました。

 

手術直後は痛みや腫れがありました。しかし、理学療法士の指導を受けながら慎重にリハビリを重ね、約1カ月半後に退院する時には、痛みは軽減し膝もかなり曲げることができるようになっていたといいます。退院後も歩行練習から始め、スポーツジムで膝への負担が少ないエアロバイクをこぐなどして段階的にリハビリを進めました。西尾さんの場合、完全に痛みを感じなくなるまでは半年ほどかかったそうです。「自分の脚ではないみたいに、両足の膝と、かかとがぴったりとつくことに驚きました」

 

「高度な医療技術と器具、そして仲間のおかげで今の自分がいる」


手術後、西尾さんは先輩から誘いを受け、ウエイトリフティングを再開しました。

 

しゃがむ練習から始め、フルスクワット、20kgのバーを持ち、次は40kgと次第に体を慣らしていきました。そして西尾さんは友人や先輩に励まされながら、20229月の全日本マスターズでは6589kg級で準優勝。続く関西マスターズでは優勝に輝きました。

 

西尾さんは「仲間と励まし合いながらトレーニングを行い、休憩中は仲間と冗談を言って笑い合う時間が、私にとってかけがえのない時間です」と話します。「痛みで歩くことでさえ辛かった自分に、ウエイトリフティングができる日がくるとは考えもしませんでした。手術を受けなかったら全く別の人生だったと思います。今の充実した生活を送れているのは医療技術と器具の進化、そして仲間の存在が大きいです」

 

※個人の感想であり手術の効果を保証するものではありません。

 

患者さんの膝を温存、多くの場合スポーツに復帰できる


 HTO手術を数多く手掛ける、兵庫医科大学整形外科学教室の整形外科医、中山寛医師は、これまで1,300件ほどのHTOを含む膝周囲骨切り術を行ってきました。

 

「例えば日本人に多いO脚の人は、膝の内側に体重がかかり、内側の軟骨や半月板が傷みます。ただ、膝が痛くても4050代の患者さんの場合は、人工関節の手術を行うには早く、薬を服用する、活動性を下げるなどの保存的治療をすることが一般的でした」(中山医師)。また、人工関節の手術は入院期間が短いという利点がありますが、手術後にマラソンなどのスポーツは制限がつく場合があります。

 

一方、HTO手術は、すねの骨に切れ目を入れて骨の角度を変え、まっすぐにすることで膝の内側にかかっていた負荷を減らし、痛みを和らげます。早期であればあるほど術後の満足度が高いとされ、中山医師は「HTO手術の最大のメリットは、患者さん自身の膝を温存でき、多くの方が正座などの膝を曲げる姿勢をとれるようになったり、スポーツや農業、重労働など体を使う仕事に復帰できたりすることです」と説明します。

 

日本人に合ったプレートの開発が、HTO手術の発展につながった


HTO手術が広がる背景として、中山医師は医療器具の進化を挙げます。HTO手術で使う「プレート」と呼ばれるインプラントはこれまで海外製のものしかありませんでした。海外製のプレートはサイズが大きいため、プレートを日本人の体形に合うように曲げるなど、手術中に調整する必要がありました。

 

しかし近年、日本人に合う日本製のプレートが開発されました。「私たち医師も非常に使いやすくなり、より短時間で手術ができるようになりました。患者さんの違和感も少なくなりました」(中山医師)。医療器具の進化が、日本のHTO手術の発展につながっています。

 

中山医師にとって、喜びを感じる瞬間は、手術を行った患者さんから、フルマラソンや山登り、スキーを再び楽しめるようになったと報告を受ける時だといいます。「今後、再生医療がさらに発展すれば、HTO手術でバランスを整えた後、軟骨や半月板の再生ができるようになる可能性もあります。今よりも膝関節機能を温存できるようになり、健康寿命を延ばすことができる時代がくるのではと思っています」と未来への展望を語ってくれました。

 

※すべての症例で日常生活への復帰を保証するものではありません。

 

 

 

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