保存的治療
保存的治療とは
変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。
保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを組み合わせて行われます。
手術療法は、保存療法で効果が得られない場合に選択されます。
日常生活指導
- 正座、長時間歩行、階段昇降等痛みを生じる動作はできるだけ控える。
- 杖などを使用してひざにかかる負担を軽くする。
- 減量する。
体重を減らす効果は大きい
まずは減量をお勧めします。これだけでも、ひざ関節痛が軽減することが多いようです。変形性膝関節症の患者さんは、どうしても運動することがおっくうになり、肥満傾向になります。
薬物療法
- 消炎鎮痛剤を内服する。
- 外用剤(湿布)を服用する。
- 関節内注射:ヒアルロン酸の注入。(関節軟骨の保護作用、軟骨修復作用、鎮痛作用)
関節内注射:ヒアルロン酸の注入とは
ヒアルロン酸は、関節の内部を満たしている関節液の主成分です。変形性膝関節症になると、炎症により関節液が増えることと関節液のヒアルロン酸が分解されることにより、ヒアルロン酸の濃度が減り、粘り気や弾力性が低下してしまいます。ひざにヒアルロン酸を注射して補うと、関節液の粘り気や弾力性が一時的に回復します。その結果、ひざの痛みが改善するのです。しかし、ヒアルロン酸注射の効果は短期的であり、決して長期間は続きません。
理学療法
- 温熱療法を行う。
- 運動療法を行う。
- 大腿骨四頭筋(太ももの前面の筋肉)の強化をする。
- 屈曲拘縮(伸びない)の改善をする。
運動療法について
適切な運動療法を行うことによって、体のバランス能力が改善したり、関節のまわりの筋肉が鍛えられたりします。その結果、ひざの安定性が増し負担が軽くなり、痛みがやわらぐのです。
ひざに負担がかからないようにひざの曲げ伸ばしをはじめとするストレッチ訓練、ひざ周囲の筋肉を鍛えたり、水中ウォーキング、水泳(平泳ぎは除く)またはウォーキングなどがお勧めです。
装具療法
- 足底装具を使用する。
- 支柱入りサポーター(不安定なひざ)を使用する。
装具療法とは…
日本人に多いO脚では、ひざの内側に体重が偏ってかかります。そのためひざの内側の軟骨や半月板がすりへってしまいます。そこで足や靴に装具(靴底)を装着して体重のかかる場所を変える方法が用いられます。写真のような足底板を使用することでひざの内側にかかる体重を多少減らすことができます。
健康用品売り場や靴売り場でも扱っていますが、専門医の指導のもとに作製、使用されることをお勧めします。
手術を受ける判断は……?
変形性膝関節症のような慢性の疾患で、ひざにあまり痛みを感じない患者さんは、保存的治療を長い間継続して、なかなか手術に踏み切れないものです。
痛いのを我慢して、いたずらに、保存的治療で頑張るのも考えものです。約3か月~半年間にわたって保存療法を行ってもひざの痛みなどの病状が改善されない場合には、手術療法を検討してみてはいかがでしょうか。
手術はなるべく早い時期に受けた方が手術の結果も満足できます。また、心疾患とか糖尿病とか合併症がある方は、内科医のサポートを得ながら手術に踏み切った方がよい場合もあります。
いずれにしても我慢せずにかかりつけの医者にご相談してみて下さい。
監修:近藤 英司 先生(北海道大学病院スポーツ医学診療センター 教授)